口癖は「私」を知るバロメーター
カウンセラーのトレーニング時代、カウンセリング中の会話をすべて録音して分析することが日常でした。はじめはとてもはずかしかったです。何がはずかしかったかというと、「無駄な言葉が多い!」こと。
「あー、そうそうそう、ですよね」といった軽い相づちから「お決まり文句」まで、まああるわあるわ。これらを一つ一つ分析して反射的な言葉を減らし、本当の心を表す言葉を使うことがカウンセリングを成功へと導く、とされていて、カウンセラーの卵はみんな訓練させられるのですが、まるで裸の王様のような気分です。
というのは、こちらが分かってないことを先生たちはお見通し!だから。日本的に言うと「まな板に乗った鯛」!もうどうにでも料理してください、とそんな気分だったのを覚えています。この作業はまさに自分の無意識を両目開けて直視する貴重な時間でした。
前回、口癖は私たちの無意識の手掛かりになる、というお話をしました
記事のリンクです↓
口癖の深層心理vol.1:あの一言が人間関係と未来を変える
口癖といっても、些細なものから気になるものまで種類は様々ですが、日常的に言っている自分の口癖をいくつか探し、観察してみると、ある一貫した「自分」が浮かび上がってくることがあります。今まで気づかなかった、知らなかった新たな自分の姿が口癖から分かってくることがあります。
普段私たちは「意識=私」と思って何の疑いもなく日常生活を送っていますが、実は無意識に動かされている部分が多い、と心理学では考えます。そして「意識=私」という方程式がだんだん古いものになってきている、というのが科学的にも証明されつつあります。ここで一つ、無意識についての大きな科学的発見を見てみましょう。
0.5秒遅れて、意識は現れる:「それは私の無意識がやったんです」
私たちは今、「私」がこの記事を読んでいる、「私」がLINEを返信している、「私」が今日の夕食を料理している、というように日中の活動はすべて「私」がしている、とたいていの人はこう思いながら思いすごしていますが、どうやらこの考えを少し考え直す時期がきているようです。
カリフォルニア大学の脳科学者ベンジャミン・リベット(1916-2007)が発見した非常に興味深い2つの実験事実があります。この事実から私たちの言動を見てみると、私たちの言動や口癖は単なる意識的活動や癖としては片付けられない事実が浮かび上がってきます。
第一の事実は、私たちは出来事が実際に生じた約0.5秒後になってはじめて、その出来事を「意識する」ことができる、というものです。
つまり「コップで水を飲もう」と私たちが意識する前に、すでに無意識が「水を飲もう」と動き出している、というんですね。そんな馬鹿な!と思いませんか?だって、「私=意識」が飲みたい、と思っているのに。。。無意識が思ているってどういうことでしょうか?
しかもこの時間差はちゃんと「補正」されて認識されます。そして「補正」されたことに意識は気づいていない。。。。自分が自分をだましている、そんな感じですね。
特に「日常的な訓練によって獲得された行為」の場合は、意識の生成に0.35秒ほど先立って身体の応答が開始される、といいます。これはなんとなくわかりますね。簡単に言うと、習慣的にしていること(朝顔を洗って、歯を磨いて、服を着る順番、お箸を持って食べる方法、ピアノや車の運転など)は、意識に上る前に体が動いている、ということです。
第二の事実はもう少し医学的な見地から見た結果です。それは、私たちが自分の意志を働かすより前にもうすでに脳神経活動が始まっていた(私たちが意思決定したと感じるよりも0.35秒前)というものでした。
もしこの結果が事実なら、「あのコップでお茶をのもう」と思った0.5秒前からすでに脳も体も準備が整っていた、「今日はあのブルーのブラウスを着よう」、「今から昨日買ってきたあの本を読もう」、と自分の意思で決めたと思っていたことは、実は無意識が「もう決めていた」。脳も体もすでに準備が整って、「私=意識」が意識するのを待っている、という不思議な状態が起こっているということになります。
私たちが「自分で決めた」と思っている日々の言動は、実は意識的にやっていると「思い込んでいるだけ」だった、意思決定のバックには「無意識」があり、それが主導権を握っていた、意識は「結果」でしかなかった、と言い換えることができます。
私たちには「自由意志」は存在しないのでしょうか?私たちは完全に無意識に操られている?じゃあ、私って誰なんでしょう?残念ながらこの検討すらできないのが私たちの意識です。
口癖は無意識への扉
もしこの事実が真実なら、無意識を知ることで、私たちは再び自由になれます。そうでなければ無意識に操られた人生になってしまう、ということになります。
そして無意識的に使っている言葉や口癖は「潜在意識の言葉」だとしたら、それを丁寧に聴いてあげることは無意識の言葉(自分を動かすもの)を聞くことに他なりません。
カウンセリングトレーニングで会話を録音し、一つ一つ言葉を検証してく作業は、自分でも知らない「本当の自分の心」を知る方法としては有効だったのかもしれません。
日常的にどんな言葉を好んで使っているか?
何故その言葉を好んで使っていたか?
そしてその言葉は本当の自分の心を表しているだろうか?
一つ一つ、暇な時間を見つけて検証してみてください。そしてもし言葉と心が一致していなかったら、よりよい表現を見つけて使ってみましょう。無意識の気持ちを正しく表現する言葉へと意識的に転換してみてください。
言葉と心を一致させていくと、心が落ち着いてきます。何とも言えない安心感と幸せを感じます。自分の心がはっきり見え、自分の心が見えると相手の心が見えてきます。何を考え何を欲し何を大切にしているかが良く見え、心にかかっていた霧が消えていくような感覚になります。
意識=私、ではなく、無意識=私
2500年前すでに釈迦が言及していた
心と言葉が一致していることの大切さは、2500年前釈迦(仏陀)がすでに言及されていたようです。釈迦が悟りに至った後すぐに「八正道(はっしょうどう)」という「8つの正しい生活態度」について説法をされました。その中の3つ目に『正語(しょうご)』とよばれる、正しい言葉の使い方について述べられています。
ブッダによると嘘偽りのない「正しい言葉使い」がウェルビーイングには大切だと。普段私たちが意識せずに使っている言葉には四つの悪(妄語・綺語・両舌・悪口)が混在していて、これが実際の物事との「乖離(かいり)」を生む、
つまり、心(思考・感情)と不一致な言葉を使うことで、意識と物事との乖離(かいり)が起こり、そしてそれが「苦」を生むと釈迦はいいます。
例えば、「素敵」とあまり思ってないのに「その服素敵ですね」と言ってしまう、こんな小さな小さな「ずれ」でさえ、これが重なると心はストレスを感じ、だんだんと苦しくなってくる、というんですね。
気づかず使っている口癖だけでなく、意図的なもの、例えば、自分の不利益になることを言葉でカモフラージュしてたり、非難や否定を避けるためにとりつくってしまったり。これらは「トラブル」を避けようとしてしまう自然な行動かもしれませんが、この「ずれ」をなくし、心と一致しが言葉を意識的に使うことで心の平安が生まれますよ、と釈迦はいいます。
心と一致した言葉を使うと、心が安定し、自分も他人も傷つけ、苦しむことがなくなる。この深層心理を、すでに紀元前にブッダは述べられていたようです。すばらしい洞察力です。
言合一致:潜在意識を覗いてみよう
心と言葉を一致させること、これは「意識」のお仕事です。「無意識」にはできない働きになります。まずは自分の本当の欲求をしることからはじまります。そしてその欲求は「潜在意識」という無意識に大量に、そして大事にしまってあります。言葉を手掛かりにのぞいてみましょう。
最初はたくさんありそうで、見たくないものもありあそうで、「無意識」を覗くのが怖いかもしれません。でも、勇気をだしてそおっと、覗いてみてください。何があるでしょうか?
「本当は今日は家事したくない」
「たまにはトイレ掃除誰かしてほしい」
「友達とカフェでゆっくり話をしたい」
「介護、本当はつらい」。。。。
そして正しい言葉でそれらをただ素直に表現してあげましょう。
「今日は家事休みたいなあ」
「今日はトイレ掃除お休みしまーす」
「この週末は息抜きしたいなあ」
「週一でいいからヘルパーさんに、頼んでみたいなあ」。
言合一致をすると、心が軽くなるのが分かると思います。ただ、素直に表現するだけで、心だけでなく体も軽く、解放された感覚を味わえます。ほんの少し言葉を変えてみると、周りがかわり、周りが変わると、自由が増えてきます。
ただそれが無意識の浅いところにあるものだったならスムーズにいくでしょう。大昔に無意識の奥の方にしまってしまったものなら、少し時間がかかるかもしれません。でも確実に変化します。あとはするかしないか。今日から少しやってみませんか?
今日もみなさんの体と心の健康を心から祈って
<reference>
*¹具体的には、以下の8つが『八正道』の内容です。
(順番にも意味があるようです)
1 正見(しょうけん) 正しく見る。正しい人生観、世界観。
2 正思(しょうし) 正しく考え、正しい意志を持つ。欲や怒りから離れる。
3 正語(しょうご) 正しい言葉を使う。悪口や嘘を言わない。
4 正業(しょうごう) 正しい行いをする。物を盗むなど、悪い行いをしない。
5 正命(しょうみょう) 正しい生活を送る。決まりを守った生き方。
6 正精進(しょうしょうじん) 正しいところへ向かって努力すること。
7 正念(しょうねん) 正しい信念を持つこと。また信念に従い生きること。
8 正定(しょうじょう) 正しく心をしずめて、一つに集中すること。
言葉には四つの悪(妄語・綺語・両舌・悪口)のもととなる、実際の物事とのかい離という要素が入っています。
*²リベット の実験
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/file:///C:/Users/USER/Downloads/CV_20240505_2013000005.pdf
*³ベンジャミン・リベット箸「マインド・タイム: 脳と意識の時間」 (岩波現代文庫)
ベンジャミン・リベット氏の40年に及ぶ研究成果が本書にまとめられている
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