芸術が病気の特効薬になる no.2. コルチゾールについて

前回、絵を描いたり、何かを作ったり、という創造活動が
ストレスホルモンのコルチゾールを減らし、
痛みの緩和、病気の予防と改善にも役立つことが期待できる、
という論文をご紹介しました。

今回はその補則、
ストレスがかかると上がる
コルチゾールのお話です。

<ストレスがかかると体の中はどうなる?>

ストレスがかかると、
体の中も異変が起こります。

ストレスがかかると、10~20分で
コルチゾール値は2~3倍も増加するようです。

コルチゾールは
生命維持に関わる大切なホルモンで、
一日でも変動があります。

長期にわたって過剰に分泌されると、
脳の記憶をつかさどる海馬が萎縮したり、
炎症が抑えられなくなったりと
体への影響がでてきます。

また
うつ患者も
コルチゾール値が高いことが報告されています。

(Holsboer F, et al,1995; Yuuki N, et al.2006; Herbert, J. 2013)

コルチゾールは睡眠とも関係が深く、
明け方に増え始め起床前後に最大に分泌するため
「天然の目覚まし時計」とも言われています。

つまり
コルチゾールは体内にある糖分を
エネルギーとして使える形にし
朝の低血糖を防ぐため、

そして
一日のリズムを調えるため、
起床後のストレスに対応するための準備、
としての役割が考えられています。

過剰なストレスが続き、
この活動リズムが壊れて
コルチゾールの分泌が慢性的に高くなると、

うつ病、
不眠症などの精神的ダメージ、
生活習慣病などの身体的ダメージを
受けやすくなると言われています。

コルチゾールのバランスを取ることは
体と心の健康を保つには必須のようです。

<コルチゾールの働き>

コルチゾールは
私たちの体のどこにあるのでしょうか?

コルチゾールは、
背中にある腎臓の上にちょこっとついている円錐形の
1cm程の小さな器官、
副腎(Adrenal Gland)から分泌されています。

小さいですが
副腎は血圧、血糖、水分・塩分量などを
常にちょうど良い一定の状態に保つための
ホルモンをつくって
体の環境整備をしています。

これらのホルモンは
生命の維持に不可欠ですが、
多すぎても少なすぎてもいけません。

そのなかでも
コルチゾールは
生命維持に関係のある大切な働きをしています。

主な働きは、
肝臓での糖の新生、
筋肉でのたんぱく質代謝、
脂肪組織での脂肪の分解などの
代謝の促進、抗炎症および免疫抑制など。

過剰に分泌されると
肥満、
下肢浮腫、
糖尿病、骨粗鬆症を合併する
クッシング症候群をひきおこします。

背中をさすられるとホッとすること、
ありませんか?

ストレスがかかっているとき、疲れた時、
肘のラインの背側を温めたり、
さすってもらうらけでも
疲れがとれていきます。

<アートが処方箋になる日>

2016年American Art Therapy Journal に
アート制作がストレスホルモンの
コルチゾールの値を激減させた、
という発表がありました。

日常生活ではあまりアート創作をしない被験者の
コルチゾール値が下がり、

また
アートを今後もしてみたいとと意欲がでた、
という結果がでした。
(Kaimal, Ray, & Muniz, 2016)

たった10分でも
マイナス感情を減らし
プラス感情を増加させるという
発表も報告されています。

(Drake & Wommer, 2012; Smolarsky, Leone, & Robbins, 2015)

プラスの感情もマイナスの感情も
私たちの体の状態に大きな影響を与えます。

うつ状態や怒りといったネガティブな感情は
免疫力を下げ、病気を引き起こしやすく、
逆にプラスの感情が免疫力や循環器系,肺機能を上げます。

(Segrestrom & Miller, 2004; Pressman & Black, 2012)

単に絵を描いたり
創作することで

ネガティブな感情は減り、
ストレスが軽減・予防でき、
そして身体症状さえも緩和される。

アート活動は
体への副作用や
中毒性といったリスクもありません。

さらに
経済的にも、
理想のストレス緩和剤
といってもいいでしょう。

その昔、
心理学がまだ発達していなかった18世紀ごろ、

精神病院では、
絵を描くことで症状を緩和することが
経験的に知られていました。

歴代の画家たちも絵を描くことが
アーティストとしての表現法以上の
精神的な慰めと人間的成長、

さらに
魂を成長させてくれるものとして
認識されていました。

(ゴッホも
入院中にたくさんの傑作を生みだしました。)

2万年以上前には
すでに、
私たちは洞窟で絵を描いていました。

日常生活の
コミュニケーションの手段として、

そして

シャーマンや霊媒師といった
霊的なものにアクセスする手段として、

アートは
心の奥深くに響いてくるものだったのでしょう。

テレビや
コンピューター、ゲームができてから、

子どもたちは
何かを創り出す時間がぐっと減りました。

学校や習い事で
大人の作った空間で活動はしていても、

これらは
放課後、
自由な時間に
遊びの中から生まれる
アートとは次元がちがいます。

アートでなくても、

お風呂の時間、
料理の時間、
趣味の時間、
瞑想の時間、

自分の心にアクセスする時間を
持つことが大切です。

心の深層部分と、
本当の自分と出会う時間を
一日一回持つ。

たったそれだけで

心の健康、
ストレス防止、
身体の健康が維持できる。

一日15分、
自分と話し合う時間を作ってみて下さい。
10年後の人生が変わります。

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