コロナウィルスが世界中に広がる中、思うことは、
ウィルスから身を守る知恵を身に着けることは
これからの時代には必須になってくる、ということ。
手、うがい、マスクなど
「外的予防」は大切ですね。
これに加え、
自分自身を守る力、
体の内側から体を強くすること、
つまり「免疫力を高める」ことは
一番確実な方法です。
そしてこの免疫力は
日常のちょっとした心がけと努力で
簡単に強化することができます。
今日は
世界の研究結果と
東洋医学の観点から
数回にわたって
免疫力を強くする方法を
ディスカッションします。
第一回目は発酵食品と食物繊維が免疫力を強化する
<腸内細菌を育てる>
私たちの体を守る防御システム
「免疫」と深く関係しているのが
腸に住んでいる腸内細菌だと言われています。
腸内細菌と免疫力の研究は
ここ10年、ますます盛んになり
様々な新事実が明らかになってきています。
これらによると、
腸内環境を向上させるには
もともと住んでいる腸内細菌の善玉菌を
増やすことが重要と分かってきました。
では、善玉菌を上手に育てるには
どうしたらいいのでしょう?
腸内細菌を育てるには
いい餌が必要です。
善玉菌を育てる餌とは
発酵食品の菌類や食物繊維。
※現在、 「お腹の調子を整える」食品には
乳酸 菌類,オリゴ糖類,食物繊維を多く含む食品
111品目が独立行政法人国立健康・ 栄養研究所の
特定保健用食品表示許可商品として登録されています。
(平成27年11月27日現在)
<体内にウィルスが入っても勝てる体を作る!発酵食品と食物繊維>
発酵食品をとっていると風邪をひきにくい、
という研究があります。※5
何故でしょうか?
その答えは
腸内で起こる「発酵」に鍵がありそうです。
腸内で善玉菌が働き発酵が起こると、
短鎖脂肪酸というものができます。
短鎖脂肪酸は、大腸粘膜の
細胞のエネルギー源となったり、
カルシウムやマグネシウム、
鉄の吸収を助けるのですが、
腸内を酸性の状態にもします。※4
(ちなみに短鎖脂肪酸はお酢のこと。
ウィルスは酸に弱い!)
そのため、
酸性に弱い悪玉菌が減り、
そして、
酸性に弱いウィルスも弱り、
善玉菌による勝利!が約束される、ということ。
繰り返しになりますが、
善玉菌が発酵するには餌となる成分、
発酵食品と食物繊維が必要!
ウィルスが体内に入ってきても
打ち勝てる体を作るには
まず腸を元気づける、
そのためには善玉菌を育てることが
大切だという理由はここにあるようですね。
<発酵って?知っとくと役立つ1分知識>
ちょっとここで寄り道。
よく耳にする「発酵食品」ですが、
では、発酵って何なのでしょう?
なじみある言葉ですが、
小学生でも分かるよう、
一言で答えるのは意外と難しい。
簡単に言うと、
発酵とは、
ブドウをブドウジュースに変身させるのではなく
ブドウをワインに、全く違ったものに変身させる魔法。
ちょっと分かりにくい?(T_T)
もっと具体的に言うと、
菌が働き、もともとあった成分が分解され、
乳酸やアルコールといった物質を生成すること。
そしてこれらは
私たち人間にとって有用である、ということです。
というのは、
この発酵食品の善玉菌が腸に届くと
腸内に暮らす100兆個もの細菌と
交わり反応を起こし、
腸内環境が向上。
結果、病気がきても負けない
体を作ってくれるから。
腸内細菌には
「善玉菌」
「悪玉菌」
「日和見菌(ひよりみきん)
の3種類あり、
それぞれ作用やからだに与える影響が異なります。
また、この腸内細菌は、民族、年齢、性別、住む場所
によって割合が変わってきます。
けれども腸内の菌叢バランスは、
過食や不規則な生活・ストレスなどで
変動しやすいため、
常に善玉菌優勢の腸内環境を保つことは
そう簡単ではありません。
そこで、
善玉菌の餌となり、
善玉優性の腸内環境を作ってくれる
発酵食品、食物繊維、
が一役買ってくれる
ということですね。
<発酵食品で育てる>
日本の伝統的な
発酵食品と言えば
味噌
醤油
漬物
塩こうじ
みりん
酢
甘酒
納豆 etc…
こうして見てみると
日本は発酵食品大国!
ラッキーなことに、
わざわざ探さなくても
日常にあふれています。
研究によると,納豆菌と同種の
Bacillus subtilis C-3102株(バチルス・サブ チルス(枯草菌)を摂取すると
善玉菌を増加させ、
悪玉菌を減少させることが分かりました。※1
この悪玉菌は大便の中にある
腐敗産物である大腸菌群だそうです。
ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれる
乳酸菌・ビフィズス菌も善玉細菌を育てますが
これらは消化の過程で
胃酸・胆汁酸の働きにより 死滅しやすく,
胃を通過できたとしても,
腸内環境に合わなければ体外に排出され
腸内で増加することはかなり難しいようです。※2
なので、日本の伝統醗酵食品は
善玉菌を育てるのに有効な食べ物、
といえるでしょう。
<食物繊維で細菌を育てる>
発酵食品についで大切なのが
野菜に含まれる食物繊維
食物繊維には免疫力を司る腸内環境を整え、
また活性酸素を無毒化する役割があります。
ところが、今の日本人は食物繊維が足りていない様子。
厚生労働省の調査によると
昭和40年と比べて1人1年当たりで17.3kgも減少。
年代別の野菜摂取量を見ても、
全年代で1日当たりの摂取目標量である
350gには到達していません。
中でも、20 歳代~40 歳代の不足が目立っています。
(厚生労働省平成26年国民健康・栄養調査報告)
努めて摂る必要がありそうです。
では、どのような食品に
食物繊維が含まれているのでしょう?
食 物繊維にも種類があり、
主に
① 水溶性食物繊維
② 不溶性食物繊維
の2種類があります。
この2つは相互 に作用することによって
腸の蠕動運動を刺激し,排便を 促します。
特に水溶性は
水分を取り込み、
腸内で腸内でゲル状となって
便の水分量を増やし、
便を柔らかくする役目があり、
腸内細菌による発酵を
受けやすいことが知られています。※3
主に根菜にたくさん含まれています。
不溶性の方は便の量を増加、
胃腸の運動にも影響を与えます。
主に全粒穀物、根菜類、海藻、キノコ類、豆類、
こんにゃく、芋類などに含まれています。
2種類の食物繊維と発酵食品を
上手に日常の食事に取り入れてみましょう。
<質のいい善玉菌を育てるには?1分ミニ知識>
善玉菌を育てる菌の種類をまとめました。
知識があれば何をどう食べたらいいか
迷わず選ぶことができます。
善玉菌を育てるものには
以下のようなものがあります。
① プロバイオティクス
ヒトの体によい影響を与える
生きた微生物(生菌)のこと。
主にビフィズス菌、乳酸菌、酪酸菌などの
生きた菌を含んだ食品を指します。
植物由来(醸造乳酸菌)の乳酸菌から作られた
ぬか漬け、味噌、キムチ、納豆菌から作られる納豆
などの発酵食品に含まれます。
ヨーグルトにも入っていますね。
② プレバイオティクス
オリゴ糖、食物繊維に含まれる、
腸の善玉細菌の餌になる食物成分のこと。
オリゴ糖は
果糖や ブドウ糖などの単糖類がつながった
難消化性多 糖類のことで
読んで字のごとく、
消化・分解が難しく、
消化されないため
そのまま大腸まで届き、
善玉菌(特にビフィズス菌)の餌となって
善玉を育てます・
フラクトオリゴ糖,大豆オリゴ 糖,乳果オリゴ糖,ガラクトオリゴ糖,
ラフィノース, ラクチュロース,キシロオリゴ糖,イソマルトオリゴ糖
などがあります。
食品としては、
タマネギ、ゴボウ、アスパラガス、キャベツ、トウモロコシ、ネギ
大豆などの豆類 にたくさん含まれています。
オリゴ糖に加え、大切なのは食物繊維。
これは前の章を参考にしてください。
<発酵食品と食物繊維、そして、>
免疫力を高くし、ウィルスや細菌から身を守るには
発酵食品と食物繊維は必須。
そしてもう一つ付け加えたいのが、
日本を代表する食品、梅干し。
ウィルスは酸性と塩気に弱い性質があります。
クエン酸と塩がバランスよく入っていて
抗菌・殺菌・防腐剤がわりになる
副作用のない、理想的な
「天然の抗生物質」と言われています。
梅干と発酵した醤油、
殺菌力の強いカテキンを含んだ三年番茶で作った
梅しょう番茶も効果が期待できる薬膳です。
これで免疫力をばっちり高められる、
というわけではありませんが、
血液の質、腸内環境、
粘膜の状態、呼吸器の状態を
よくしておくことは
ウィスルを寄せ付けない
感染予防として役立つでしょう。
2020年、コロナウィルス、インフルエンザが
世界に蔓延していますが、
これがおさまってもまた変性したウィルスが猛威を振るう時期がくるはず。
まずは、自分を調える=免疫力を
強めることが確実で早道。
みなさんの健康を祈って。
<2020年ワークショップのお知らせ>
脳と心の勉強会 脳ハウは8月上旬の週末を予定
心理学ワークショップも8月上旬の週末を予定
<参考>
※1 鈴木宏美 他:Bacillus subtilis C-3102株大豆培養物のヒト 腸内環境改善効果,腸内細菌学雑誌,18: 93–99,2004年
※2 光岡知足:腸内フローラと生活習慣病,学会出版セン ター(2011).p. 32.
※3 田中明 他:あたらしい栄養事典. 日本文芸社(2016) p.144
※4 原博.:プレバイオティクスから大腸で産生される短鎖脂肪酸の生理効果.腸内細菌学雑誌(2002). 16(1) 35-42
※5 イギリス ラフバラ大学のグリーソン教授グループ:「International Journal of Sport Nutrition & Exercise Metabolism」電子版発表
実験内容:自転車部、トライアスロン部、陸上部(中長距離走)、水泳部等に所属する運動選手を対象に乳酸菌飲料の飲用試験を実施したところ、上気道感染症(いわゆる風邪)の発症率が低減する効果が確認。