建築の構造・心の構造
生前、父は、家の中のデザインやインテリアのすばらしさより「建物の基礎」がどれだけ大切か、地震に襲われてもビクともせず残る家はどんな家か、よく私に話してくれました。(父の専門は建築ではなかったのですが)
どんな土地環境にどんな材料を使って、どのくらい質の高い基礎を作ったかでその家の価値が決まると、口数の少ない父でしたが、これに関しては熱く語っていました。
(私たちは関西淡路大地震を経験しましたが、父の建てた家は確かにビクともしませんでした。モダンな家でないことに母は時々不平を言っていましたが、この時ばかりは深く感謝していたようです。)
さて、人間の心も同じく、私たちの基礎は幼い頃に作られます。心の土台は幼少期にあり、という「3歳児神話」には賛否両論ありますが、かといって、幼児期の環境は今の私たちの基礎を作ってはいない、ということを否定することもできません。「今の私」が小さい頃に得た土台の上に構築され、その後の出会いと経験で微調整されてきた。現在、多くの心理学者もこの意見に賛成の立場のようです。
では、私たちの心の基礎とは何なのでしょうか?心理学的には、それは2つの力、「自分を信じる力」=自己肯定感、と「他人を信じる力」=基本的信頼、であると言われています。そしてこれをはぐくむための基礎となるのが「アタッチメント(愛着)」と呼ばれる養育者との信頼関係だと言われています。では、私たちはどんな基礎をもっているのでしょう?木造でしょうか?鉄筋?子クリート?残念ながら3歳までの記憶はほとんどの人が失っていますが、それを知るいろんな手がかりが心理学にはあります。
記憶と今の私
改めて自分の人生を両目を開けて振り返ってみると、たくさんの大人とふれあいながら、周りの環境との相互作用によって育ってきたことに感動します。たくさんの大人に声掛けをしてもらい、アドヴァイスをもらい、今の「私」がここにいます。もちろんマイナスの体験もたくさんあったでしょう。悲しい体験、つらい体験はエネルギーが高いので、たとえそれが時間的に短くても記憶に刻み込まれ、トラウマとして残っていることもあるかもしれません。
でも、どんなに厳しい親でも、たとえ暴力をふるう親であっても、24時間厳しくしたり暴力をふるうことは不可能です。実は記憶には残っていないけど、親も反省し、夕食時には一瞬でも笑顔をみせていたかもしれません。親に怒られた後、他の大人が優しい声をかけてくれていたかもしれません。悲しい出来事、つらい出来事はインパクトが大変強いため、よい思い出を消してしまい、ただ覚えていないだけかもしれません。
記憶には残っていなよい思い出は私たちの中にたくさんどこかに残っています。そのよい思い出をもう一度思い出して、潜在意識に整理して入れなおしてあげることは、ウェルビーイングな人生を生きるためには大切な作業です。なぜなら、潜在意識によって意識の状態が大きく変化する、つまり今の私の状態が変わってくるからです。
(潜在意識・顕在意識についてはこの画像をクリックしてください↓)
幼い頃は自我がまだ十分育っていないため、状況判断や自分の感情をコントロールできません。身体的にも小さいため世界が巨大に見え、大人は巨人。この巨人が大きな声で怒るとなると、子どもにとっては恐怖でしかありません。まさに、子どもにとって世界はこういった感じで見えているのだと思います➠十和田湖美術館にあるロン・ミュエク作「スタンディング・ウーマン」
生まれたての自我は迷います、出来事全体を客観視し分析、判断する力が弱いため、「怖い」「悲しい」「つらい」と感じることを体験すると、その怖さ、辛さ、悲しさという感情だけがそのまま記憶に残され、心に印象として刻まれてしまいます。「昨日は、お母さんも疲れていたから仕方ないか」とは思えないんですね。お母さんの目くじら立てて怒る顔と、恐ろしい金切り声しか記憶に残らない。。。
過去の思い出は本当にそうだったのか?大人になった自分の目から見ると全く違った印象があるはずです。小さい頃、「大きくて怖かった隣のおばさん」を大きくなってから出会ってみてみると、意外に私より背が低く小柄で、ずんぐりはしているけど、声もそんなに大きいわけでなく、単にはっきりものを言う少しおせっかいないい人だった、という体験、お持ちの方もおられるのではないでしょうか。
私たちの認知・記憶はその時の気分に大きく左右されます。でもそれによって今の自分がある。そうなると、今思っている「自分」に対しての印象、「アイデンティティ」も変わってくるかもしれません。私ってこんな人間、と思い込んでるだけかもしれません。新たな自分が見つかるかもしれません。
次回のウェルビーイング心理学は「自我」について学びます。一緒に心理学び心の整理整頓、断捨離していきましょう!今日もみなさんの健康を心から祈って
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