精神科医?カウンセラー?いったい何が違う?

あなたがいま、必要としているのは「治すこと」? それとも「変化・成長」?

精神科医とカウンセラーって何が違うの?

「精神科医とカウンセラーってそもそも何が違うの?」

これは心理の現場でよく聞かれる質問のひとつ。たしかに、両者とも“こころの専門家”を名乗っているし、困っている人を助けるという点では似ています。でも、アプローチや役割、そもそもの立脚点もぜんぜん違う、というのは意外と知られていない?と感じたのでここでみなさんにシェアーします。

誤解を恐れずに一言で言えば――

精神科医は「脳を見ている」、カウンセラーは「人生の物語を見ている」。

もちろん、精神科医の方でもカウンセラー的アプローチをしている方も多くおられるので一概には言い切れませんが、あえて言うと、

前者は医師免許をもち、薬を処方し、症状に介入し治療する。カウンセラーは国家資格や心理学的トレーニングを背景に、言葉や沈黙や関係性をつかって、人の中に眠る“まだ語られていないもの”を共に探しだす。

風邪を治すためには、風邪薬と休養が両方とも重要なように、精神科医もカウンセラーもどちらも必要なんですが、ただ役割が違う。ここを理解すれば、今自分がどちらが必要か?うっすら見えてくるのではないでしょうか。

アメリカでの現場経験から:それぞれの役割は明確に分かれていた

私自身、アメリカの大学院でカウンセリングを学んでいたとき、精神科医・ソーシャルワーカーとリエゾンを組んで一人の患者さんを支える実践トレーニングを受けていたのですが、そこでは、役割分担は驚くほど明確でした。

• 精神科医は、医学的な診断と薬の調整に徹する
• ソーシャルワーカーは、制度や生活の支援を整える
• カウンセラー(私たち)は、クライアントの心の声にひたすら耳を傾ける

特に私が属していた精神科リエゾンチームは、身体疾患の治療を受けている患者の精神的なサポートもしていたので、事故で半身不随になりうつになった方、パーキンソン病で妄想がある方、高血圧で認知症とうつ病と診断された方、など体と心の診断をうけられた方も多く、必要に応じてさらに他の専門家とも連携ができる体制が整っていました。

みんなが“全部できる人”になるのではなく、それぞれが「自分の立ち位置」を守りながらチームとして動く。これは当時は(20年以上前、古くてごめんなさい)、日本の現場ではまだあまり見られない光景だったし、個人的にも大きな学びになり、今の財産となっています。

ケース別に見る「誰が何をするのか」

抽象的な話ばかりしてきたので、もう少し詳しく具体例でみていきましょう
たとえば…

• 重度のうつで朝も起きられないときはーーー
まず精神科医の出番。身体レベルでシステムが止まっているから、ここは“他力”が必要。

• 回復してきたけど、自分の思考や感情のクセ、過去の傷、繰り返す人間関係のパターンに向き合いたいときはーーー

カウンセラーの出番。「今度こそ、自分で変わっていきたい」というエンジンに火をつける。

• 発達障害の診断が必要なときは、精神科医。日常生活での困りごとはソーシャルワーカーが出番。

• トラウマや悲嘆、スピリチュアルな問い(「私は何者か?」「なぜ生きているのか?」)を抱えたときは、ほとんどの場合カウンセラーの独壇場。医療モデルの出番は少ない。

こうして見ると、「どっちに行けばいいの?」ではなくて、「今の自分に何が必要か?」で選ぶのが正解だということが見えてきます。

深層心理学で読み解く:これは“魂の旅”である

ここまで来ると、もう一歩、深く考えてみましょう。

「じゃあ、そもそも“治る”って何?」

私の専門でもある深層心理学やトランスパーソナル心理学では、“癒し”とは単に症状が消えることではない、それはむしろ「自己(Self)との再会=魂の統合」のプロセス、こんな風に考えます。

心の苦しみや病は「真の自己との断絶」で、「成長」のプロセスの一つ。それを再びつなぎ直すためには「自分で意味を見つけていく」こと、他力ではなく、能動的な力(自力)が必要、と考えます。

でももちろん、誰もがいきなりひとりでその道を歩けるわけじゃない。だからこそ、助けを借りながらの自力――つまり、“関係性の中で変わっていく”というスタイルが、カウンセリングの本質になってきます。

最後に

精神科医とカウンセラーの大きな違いは「他力か、助けを借りながらの自力か?」。

けれども、本質的には、自力か他力か、の二極ではなく、その“あいだ”で生まれるものだと個人的には思っています。なので精神科医のかたもカウンセリングをするし、カウンセラーも医学的アプローチから見ることもある。治す医療、変化のプロセスを支える心理。どちらかではなく、両方の視点を持つことが、本当の癒しに近づく道と感じています。

みなさん、ほんの少しでいいので、今から自分の小さな「声」に耳をすましてください。心の声は本当に小さく言葉でないことも多く、とても聞きづらい。でも、聞き取ることができたら、大きな変化を必ず生んでくれます。

*精神科医や心理カウンセラーとして現場に携わるみなさまへ。
本記事はあくまで私見に基づく整理であり、不正確な点や視点の偏りもあるかもしれません。
ご意見・ご指摘・ご感想などありましたら、ぜひお聞かせいただけたら嬉しいです。


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